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旅の欠片 弐 時計は止まる

 カチコチ。カチコチ。
 時計の針が走る走る。
「おや、時間がずれておるな」
 時計の持ち主のおじいさんは、少しあわてんぼうな時計の針を戻す。突如ギッという扉がきしむような音がした。しかし彼は気にしないで立ち去った。
 カチコチ。カチ……コチ。
「あらまあ。時間が遅れているわ」
 客人のおばさんは、親切心で時計の針を進めてやる。
「ほら、がんばって走りなさい」
 励まし声が聞こえたかは知らずも、時計は再び走り出す。もう狂ってないだろうと、おばさんはいなくなった。
 カチコチ。カチ……コチカチ。
 時計の針は走る走る。走っていた向きも忘れて逆回転。
「ねえ、この時計狂ってるよ」
「ほんとだ。逆向きに回ってる」
 少女の声に少年の声がこたえる。
「おもしろそうだから、このままにしよう」
「いいのかな」
 少年の提案に少女は少し罪悪感を感じながらも、走り出した少年の後を追いかける。
 カチ……。コチ……。…………。
 時計の針はやがて止まる。前に後ろに走り疲れたのだろうか。わずかな気力を振り絞って、かすかに振れている。しかしもうこの時計に、本来の役目を果たす力は残されていない。
「なるほど。この時計が原因か」
 異国の服をまとった若者が一人、時計の前でつぶやいた。
 外へ出れば、動いているのは彼一人。時計が動かなくなった日から、都の民もその時を止めた。
 彼が時計のねじを回しても動かない。もう死んでいるらしい。この都も、この時計も。
 若者は逃げるように都を後にした。
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テーマ : 自作小説
ジャンル : 小説・文学

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図書館の住人

樹


好物:百合、ファンタジー
傾向:眼鏡キャラ、マイナーキャラ

好きなカプは、ひだまりスケッチは沙英夏目、なずのり、マリみては蔦笙、けいおんは唯和、ストパニは渚玉、などなど。

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