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色の欠片 壱 灰羽(前)

 黒い海のような夜空を、流れ星のように一羽の鳥が落ちていく。虹色の羽毛に身を包むその姿は、我を忘れるほどに鮮やかだった。しかしその翼を羽ばたかせる力はなく、ただ地上へと導かれていく。その内に秘める力は、空へとあふれ出るかのようににじみ、虹色に染めていく。
 世界は鮮やかに彩られる。そのさまはオーロラが全世界を覆ったかと錯覚するほどの美しさ。

 私はあの鳥の落ちた地へと、導かれるように歩いていく。
 呼んでいるような気がした。心の内に悲しい感情があふれる。張り裂けんばかりに、胸の奥へと慟哭の声が響き渡る。おそらくは、あの虹の鳥の叫び。
 光の帯が落ちた先は、深い谷の底だった。まぶしくて思わず目を細めるほどに、そこにはあらゆる色素が漂っていた。虹の霧の中、落ちた鳥の影を探す。

「来るな!」

 突然の鋭い声音に私はひるんだ。しかし、その声はあまりにも澄んでいて、これ以上の美しき声の主はいようかと思うほど。怒鳴る声ですらこれなのだから、優しい声で喋ったら……想像もつかない。

「そこにいるの?」

 色素はまとわりつく厚い壁となり、歩みは自然と遅くなる。虹の海をかき分け、かき分け、ようやく極彩色の層をぬけた場所に、浮かんだのは少女の姿だった。

「あなたは……」

 驚きを禁じえない。小さくうずくまる少女の背には羽があった。彼女の身体からすれば、あまりにも小さく、空を飛ぶには頼りない灰色の羽。肌は透き通るような白。
 すべての色素を吐き出してしまったのだろう。少女の周りのみが、色の海に沈む水泡のように無色だった。

 私は少女の身体をを両の腕で優しく包み込む。自分でも、どうしてそのようなことをしたのかは分からなかった。ただ、少女の姿があまりにもさびしそうで、私がこうしないと、彼女は今にも、それこそ水泡のように弾けて消えてしまいそうで……

 暖かかった。その透き通った肌も、やわらかい羽も。その温かさといったら、思わず涙がこぼれ出るほどで。湧き出した水は、両目の泉からあふるようで、止まりそうになかった。

「何で泣いているの?」

 少女の心配そうな声。想像したとおり、私の心を包み込むかのような、優しくて、温かくて、美しく、そして切なくて……

「分からない」

 いろんな感情が大波のように押し寄せてきた。

「不思議。あなたに包まれているとなんだか安心できるの」
「離したくない」
「うん」

後に続く
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テーマ : 自作小説
ジャンル : 小説・文学

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図書館の住人

樹


好物:百合、ファンタジー
傾向:眼鏡キャラ、マイナーキャラ

好きなカプは、ひだまりスケッチは沙英夏目、なずのり、マリみては蔦笙、けいおんは唯和、ストパニは渚玉、などなど。

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